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分散型電源
                             

 資源エネルギー庁の施政情報によると、現在の日本の電力は99%以上が火力、原子力、水力発電によるものである。 その中でも特に火力発電の比率が高く、依然、石油依存度(一次エネルギー供給用)が高い状態で、国家的に環境性、 中東依存性などの問題を考慮すると、脱石油を行う必要があると考えられている。脱石油を行う場合、現状の大規模集中型での 電力供給形態のままでは原子力発電を増設する以外は難しいと考えられており、原子力発電の発電自体は効率、環境性に優れているが、 廃棄物、安全性などについて問題視されているため、世論的に増設は難しいとの見方がある。 そこで最近、電力供給形態を大規模集中型から小規模分散型への以降を目的とした研究・開発が盛んに行われている。
 分散型電源とは、需要地近傍に分散して配置される小規模な電源で、具体的には太陽光、風力発電など自然エネルギーを 利用したものや、燃料電池、マイクロガスタービンなどのコージェネレーションシステム(熱電併給)があり、これらの分散型電源とは、 主に下記のようなメリットがあると考えられている。

1)より多くの自然エネルギーの利用が可能になる。
 ・石油依存度も低減できる。環境も改善される。
2)送電ロスが少なく、発電時発生する熱の利用が可能なため、効率が上がる。
 ・コストメリットが期待できる。
 また、将来的に電力供給形態を大規模集中型から小規模分散型へ移行するためには、各地域でこれらの分散型電源同士 を結び、相互に電力(熱)を補い合い、一般系統から独立させる必要があると考えられる。
 分散型電源同士を結んだ電力ネットワークを実現するためには、安定して電力を供給し、なおかつ消費者に近い場所への 設置が可能な中心電源が必要となると考えられている。そこで分散型電源の中でも特に注目されているのが燃料電池である。 現状では燃料電池もその他の分散型電源も多くの課題を抱えており、本格的な普及にはまだ時間がかかりそうだが、 将来的には燃料電池を中心電源とし、各地域、用途に合った分散型電源と組み合わせた自由度の高い電力ネットワークを 構築することが期待されている。そして仮に電力供給形態が小規模分散型に代われば、当然、家電製品、冷暖房システムも 分散型電源同士を結んだ電力ネットワークに合わせたものに変っていくと考えられる。
 電力供給形態を大規模集中型から小規模分散型へ移行することは、技術的な要因以外にも政治的は要因が多く関わるため、 先行きが不透明であるが、仮に分散型電源同士を結んだ電力ネットワークを実現することになれば、私たちの生活も 社会もいろいろな意味で一変してしまう可能性もあり、今後の動向が注目される。

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