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IPLV
                             


  空調熱源機器の成績係数COP(Coefficient Performance)は、常に一定ではなく、部分負荷率、空気や冷却水の温 度条件によって変動する。これまで機器性能を代表してきた定格性能(熱源機が定格能力を出すときのCOP)は、最 大負荷で外気温度が最高の条件を想定した性能であり、年間の運転時間ではわずかな頻度しか出現しない条件である。 最近の熱源機器は変動する負荷に応じてインバータ、休筒シリンダ、多台数圧縮機、連結型熱源機など熱源容量を 制御する方式が主流となり、定格性能と合わせて期間性能で機器の成績係数を示す必要がある。
 ルームエアコン、パッケージエアコンでは、従来の定格成績係数COPに年間成績係数をAPF(Annual Performance Factor)を加える変更が検討されている。IPLV(Integrated Part Load Value)は、米国ARI(Air conditioning & Refrigeration Institute)が負荷の異なる4点のCOPから期間成績係数を定義した簡易的指標であり、米国ではセントラル 熱源機器のカタログにCOPとともに併記される。ここでは、期 間成績係数の重要性が高まる中、議論される機会が多くなった IPLVについて紹介する。
 IPLVは、ARI基準1-3)を参考に空気調和・衛生工学会「建 築・設備の省エネルギー技術指針」4)においても算出方法が規定 されている。IPLVは各部分負荷率でのCOPに年間での発生頻 度の重みを付加して、加重平均としたものである。部分負荷ス テップが4段階の場合のIPLVは次のように計算される。
IPLV=(PLF1-PLF2)(COP1+COP2)/2
+(PLF2-PLF3)(COP2+COP3)/2
+(PLF3-PLF4)(COP3+COP4)/2
+PLF4・COP4
 
 ここで、n(=1~4)は部分負荷運転ステップ、PLFnは部 分負荷係数(図1を読む)、COPnは部分負荷運転ステップごとに 決められた空気条件(省略)で運転したときの成績係数を示す。
 部分負荷率が、100%、75%、50%、25%となる空気熱源ヒ ートポンプユニットの期間成績係数(IPLV)は、表1のように計算される。

 
表1 IPLV計算例
(空気熱源ヒートポンプユニット、部分負荷ステップ4の場合)
ステップ
部分
負荷率
凝縮器入口
空気温度(℃)
部分負荷
係数PLFn
部分負荷
COPn
部分負荷
平均COPn
         PLF差        
         (重み)        
加重平均
1
 
2
 
3
 
4
 
 
100%
 
75%
 
50%
 
25%
 
0%
35
 
30
 
25
 
20
 
15
1.0
 
0.9
 
0.4
 
0.1
 
 
2.6
   >
3.0
   >
3.4
   >
2.4
 
0.0
 
2.8
 
3.2
 
2.9
 
2.4
 
 
(1-0.9)=0.1
 
(0.9-0.4)=0.5
 
(0.4-0.1)=0.3
 
(0.1-0.0)=0.1
 
 
0.28
 
1.60
 
0.87
 
0.24
 
   IPLV2.99


 IPLVの計算では、部分負荷係数PLFが重要な因子である。部分負荷比率100%(定格運転)の成績係数が良くても、 PLFを決める加重平均の重みは0.1に過ぎない。計算例では、加重平均の重みは部分負荷比率75%で0.5と最大であり、 IPLVを向上するためには、このときの成績係数を向上することが効果的である。
 部分負荷係数は、部分負荷率の累積出現頻度を示すと考えられ、部分負荷率に対して図1のようなS字形曲線を描く。 曲線の微分係数は相当する部分負荷率の出現頻度を示し、図1では、部分負荷率60%が最大出現頻度であるかことがわか る。部分負荷係数は、ARIが米国の気象条件、建物負荷などから求めた曲線であり、必要に応じて日本版へのデータ補 正が必要と思われる。
 以上のようにIPLVは、部分負荷条件のCOPを用いた簡単な計算で期間性能を評価することが可能であり、実用価値が 高い。期間成績係数の導入では、ルームエアコンやパッケージエアコンが先行して年間成績係数APFの導入を計画 する中、チラーなどの大型セントラル機器では、日本版の部分負荷係数に基づいたIPLVでの運用が過渡的には好ましい と考える。
 
文 献

 1)ARI:Standard 210/240:Unitary Air Conditioning and Air source Heat Pump Equipment(2003),pp.39-41.
 2)ARI:Standard 340/360:Industrial Unitary Air Conditioning and Heat Pump Equipment(2000),pp.14-16.
 3)ARI:Standard 550/590:Chilling Packages using the Vapor Compression(2003),pp.24-27.
 4)空気調和・衛生工学会:「建築・設備の省エネルギー指針(1994)」pp.382-385.

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